オレはニート王サトル、ニートの王をしている。
ニート生活は大変充実していて、とても楽しいものだ。
社畜が汗を垂らして日中働いていたり、学生が学校で勉学に勤しんでいる時に家でグータラするのは最高だ。
「さてと今日も楽しいニート活動をしますか」
ニートに大切なのは日々の生活をいかに金を使わずに楽しく過ごす事に尽きる。
良くニートは金が無いから人生を楽しめないといった様な話を聞くが、金があれば楽しいという物でもない。
たしかに最低限のゲーム代金程度はいるが、それ以外の金は別に無くても困らない。
衣食住が整っていれば、日々の生活を楽しく過ごすのに対して金はいらない。
「今日はこのゾンビゲーの縛りプレイで楽しむか」
ゲームの楽しみ方は色々である。
普通にクリアするのも楽しいが、初期装備のみでクリアするのもまた難易度が上がりそれはそれで楽しいのだ。
「装備の威力が弱いからヘッドショットを上手く決めたり、間合いの取り方が重要になるな」
とにかく装備が弱いとゴリ押しが難しくなるので、長期戦になる事が多い。
ここはニート王の忍耐力が試される。
ー30分後ー
「うーん……ムリだな!」
このゲームの初期装備ではどうやらクリアするのは難しい様だ。
というよりあまりに武器の威力が弱すぎてまったく先に進まないのでイライラする。
敵を無視して進んでいってもボス戦が長すぎてめんどくさい。
そんなもうこのゲームやめるかーと思った時にオレの部屋のドアが開いた。
J( ‘ー`)し「サトル! まーたアンタはゲームばっかりして、そんなに毎日ゲームばっかりして楽しいの!?」
ニートにありがちな唐突にカーチャンの登場である。
「毎日ゲーム楽しいよ、まぁゲームばっかりやってるわけじゃないからローテーションだけど」
J( ‘ー`)し「あっそ、まあそんな事どうでもいいわ、カーチャンこれからパートだからちゃんと自宅警備するのよ!」
そういったカーチャンはパートに出かけていった。
トーチャンの給料が少ないので、カーチャンはパートをして家計の足しにしている。
「……カーチャン、パート頑張ってな、オレは絶対働かないからオレの飯代を稼いできてな」
まさに外道の思考だが、オレはニート王であるゆえに働かない。
なのでオレ以外の誰か、つまりトーチャンとカーチャンが働いた金で養って貰わないとこまるんだ。
「さってと、皆が働いてる時に昼寝でもすっかな」
平日の真昼間から昼寝するのは最高に気持ちが良い、皆あくせく働いていると思うとなおさらだ。
ニートは高等遊民であるがゆえに働かなくていいのだ。
「とりあえず3時間ぐらいは寝られるかな、おやすみ」
ー3時間後ー
「う、うーん……そろそろ起きて飯でも食うか」
昼寝から起きたオレは2階の自室から降りて1階のキッチンにある冷蔵庫を開けて食料を物色する。
「うーん、そのまま食べられる物がほとんどねぇな、なんか作るか」
ウチのカーチャンはオレのタメに特別に食料を確保したりはしないので、すぐに食べられる物が無い場合は自分で料理する事も多い。
「卵があるから目玉焼きとキャベツの千切り、ドレッシングもあるな……、後は米と水って所か」
幸いご飯は炊かれていて十分な量があったため、簡単な料理をすれば腹を満たせそうだ。
楽しいニート生活において健康は大切である。
ニート王として体を害する物ばかりを食べる訳にはいかないので、必ず毎食野菜を食べるようにしている。
まぁ、冷蔵庫にあればの話だが。
「よし出来た、部屋で動画でも見ながら飯を食おう」
作った料理をトレーに乗せて自室まで持っていく。
PCが置いてある机に食器を置いて食事のセッティングを行い、新着動画の面白そうな物を選ぶ。
動画はジャンルを選ばず面白そうだと思った物はなんでも見る。
そうやって毎日ムダな知識を蓄え、笑い声を放出して日々を過ごす。
「くっくっく……、あー楽しかった、この動画の製作者センスあるわ」
まだあまり有名では無いが、今後の頑張りによっては有名な動画職人になる事だろう。
普通に美味かった飯が入っていた食器をトレーに戻して、1階のキッチンの洗い場まで持っていく。
カーチャンが洗い物を済ませていなければ食器をそこに紛れ込ませるが、今日は全て洗ってある様なのでめんどくさがりつつも自分で食器を洗って片付けた。
「さーて夜までまだまだ時間があるな、イラストでも描くか」
オレは暇つぶしにイラストやマンガ、小説などの創作活動をたまに行っている。
ちなみにそういう系のプロになれる才能があると思ってはいないのであくまで趣味である。
「今日は今期アニメで一番人気のある美少女キャラクターのこの子にしよう」
オレはオリジナルキャラも描くが、普通に二次創作もするのでアニメの公式サイトやアニメ自体を参考に自分のイラストを完成させていく。
自分の好きなキャラクターに好きなポーズや服装を着せるのは中々に楽しい物である。
また薄着にさせるとセルフオカズを作成する事が出来て夜に捗る時もある。
1時間ぐらい掛かって下書きを完成させたオレは、それを複合機のプリンタに備わっているスキャナーでパソコンに取り込む。
ペン入れや着色をしても良いのだが、そこまで凝るとかなり時間が掛かる上に結構な集中力を必要とするので、この作品はとりあえず下書きだけにしておく。
「あとはペイントソフトでトリミングとゴミ取りをして完成だな」
そうしてモノクロの完全に下書きのままの作品が完成した。
あとはコレをネット上のお絵かき投稿サイトにでも投稿して皆の反応を見るのが一つの楽しみである。
「ただのニートがこんだけ描ければ十分だろ、オレも楽しめて皆もなんだかんだで喜ぶし今日も良い事をしてしまったな」
社会貢献とかまったく興味が無いオレだが、結果的に社会貢献となっている。
「うーん、今度はWEBコミックでも読むか」
WEBコミックはプロや個人がマンガを公開していて、無料で読めるので時間つぶしには重宝する。
「やっぱ現代って恵まれてるんだな、ネットさえあれば娯楽なんて無料で済ませる事が出来る」
オレは良く読んでいるWEBコミックをお気に入りにいれているので、更新がされていないかチェックした。
「おっ、この先生の更新されてるじゃん」
オレのお気に入りの先生である一人は妹キャラがどうやら好きな様で、毎回妹がメインヒロインとして描かれている。
「うーん、この妹可愛いんだよな、でもリアル妹はこんな事絶対いわねーんだよな」
とリアルの妹がいるオレはその虚像の妹キャラになんともいえない思いを持つ。
そんなこんなで適当にWEBコミックを読み漁っていると妹のアヤカが中学校から帰宅してきた。
アヤカ「ただいまー……って今日もカーチャンはパートか」
「アヤカお帰りー」
と兄であるオレは妹のアヤカに返事をした。
アヤカ「ゴミに帰宅の挨拶したわけじゃないっての」
兄がニートとなると妹の態度はやはり冷たい物になる、ましてや女子中学生ならなおさらだ。
「アヤカたまにはなんか話そうぜ、ニート王は寂しいよ」
アヤカ「ハイハイ、ニート王さんに私はまったく興味がないから話かけないで下さい」
「さっき読んでたWEBコミックでさ、すげぇ可愛い妹キャラがいてな、お前にもこんな態度が出来るんじゃないかと期待してるんだが」
アヤカ「マンガと現実をごっちゃにすんな、マジキモイから関わらないで」
と態度の悪いセリフを残して妹のアヤカは自室に入っていった。
「さすがに嫌われてるなー、まぁまだ女子中学生にはわかんねーか、社会の辛さってヤツをさ」
妹のアヤカにとってニートである兄は身内の恥ずかしいデキモノの様な物で、どうやっても心を開く気がないのだろう。
「さてと寝るか」
ニートは嫌な事があったりめんどくさい事があったり、暇だったりするととりあえず寝る。
大抵のニートは睡眠が大好きなのだ。
オレは寝る時はかならず毛布を股に挟んで抱いて寝る。
そうすると何かを抱きしめている様で気持ちがいいのだ。
さらに脳内妄想で美少女とイチャコラしている物語を想像するとなおさら楽しい。
「っまったく可愛いなー、可愛いなー」
と今妄想しているのは今期アニメに登場する美少女キャラである。
脳内妄想は完全な0円で楽しむ事が出来るのでニートにとって最高の楽しみの一つだ。
そして気付かぬ内に幸福と共に夢の中に堕ちているのだ。
オレの経験上、おそらくこのまま深夜2~3時ぐらいまでグッスリ眠るだろう。
そして起きたら飯を食おう。
そうしてまた、ゲームとかマンガとかアニメとかを見て疲れたら寝よう。
そうやってニートである日々を楽しむ。
それがニート王サトルの人生なのだ。